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2005/03/11 01:31 ヨヨギパーク

新宿西口交番のそばで、イヴァン・バッソに似た若い白人男性と若い頃の
ジェーン・フォンダに似た30代らしき白人女性の二人組から道をきかれた。
念のためご存じない方にご説明いたしますと、バッソは昨年のツール・ド・
フランスで1勝しているロードレース界のホープ。「美しいバッソ」と
言われることもあるイケメンなイタリア人のおにいさん。オフィシャル
サイトはこちら http://www.ivanbasso.it/

カレー屋さんに向かって歩いていた空腹のボクに、英語で声をかけてきた
のはイヴァンで、内容は「代々木○○へはどう行けばいいのか?」という
ベーシックなもの。しかし、肝心な○○の部分が聞き取れなかった。
「バハク」あるいは「パハク」と言っているように聞こえた。こうやって
文字にすると「そりゃパークでは」とすぐわかるわけですが、ハの部分、
つまりRのところが鼻から抜ける微妙な発音で、どうしてもパーではなく、
バ・ハと2音に聞こえた。そんな言葉知らないよ。ヒアリング苦手です。
つーか、全然ダメかも。

「バハクってなに?」と聞き返したら、イヴァンは困ったような迷惑な
ような顔をして、たぶん「なんでこんな簡単な言葉が通じないんだよ」
って思ったんだとおもうけど、何度か「パ・ハァ・ク」を繰り返しました。
ボクも「え?」って顔を繰り返したあと、PARKってスペルを言ってくれて
やっとわかった。

質問がわかったところで、次の問題は新宿西口交番から代々木公園へ
行く方法を説明することです。丁寧に説明しようとしたら、けっこう面倒。
距離的には近いけどステップはけっこうある。一番はしょった説明は
「JR山手線で原宿へ行ってもう一度聞け」かな。でも、それじゃ不親切
かも、と思ったので、手始めに「バスと電車どっちで行く?」ときいて
みた。すぐそばがバスターミナルだったので、バスのほうが説明するのも
実際に行くのも簡単かもなと考えたわけです。

そしたら、ふたりは英語ではなく謎の言語で相談をはじめた。ジェーンは
ボクから2m以内には近づいてこなかったので、声は雑踏の音にまぎれ
ほとんど聞こえなかった。ボクはそのときはじめてジェーンの顔だちや
服装をちゃんと見たんですけど、美人なだけでなくお金持ちオーラが少し
出てました。濃い茶系のジャケットと冷静で上品な印象の目としなやかな金髪の
組み合わせがヨーロッパな感じでした。イヴァンの服装はジーパンに
ジャンパーみたいな特徴のないものでした。

数十秒間の相談を終えたイヴァンはボクに向き直り、突然「サンキュー」。
目線で若干申し訳なさそうに「彼女がもういいって言ってるんで」とゆって
ました。そして、もうひとこと「バイ」と言うとジェーンに付き従うように、
それでいて親密な距離感を保ちながら小田急ハルクのほうへ去って
いきました。あのふたりの関係はどういうものだったんでしょう。アヤシイ
ようなそうでもないような。ていうか代々木公園はどうなっちゃったのよ? 

こんな想像をしてみた。

ふたりは日本へお忍びで来ているのです。とくにジェーンがいま日本に
居ることを知っているのは幼なじみのマリアだけ。言い出しっぺはジェーン。
費用もジェーンが出しています。この旅におけるイヴァンの役回りは、
彼女の思いつきを実行する忠実な付き人。初めての東京は想像以上に
ごちゃごちゃで朝から道を尋ねまくっているのですけれど、そんな苦労も、
母国から遠く離れ、ふたりを知るものは誰もいない土地で蜜月の時を
過ごす喜びに比べたら取るに足りないこと。頭の悪い日本人のせいで
道を聞くのに手間取り、その間に彼女の気が変わって無駄手間になって
しまったとしても、尽くしているという思いがある種の高まりにつながって
いくのです。「ヨヨギパークはやめて、ソニープラザってところに行って
みない? そのあとはカブキザね」。そんなガイドブックを左から右に読み
上げてるだけのような彼女も、若く美しいオトコを翻弄することで小さな
快感を積み上げているのです。結局、今日は投宿しているパークハイアット
から遠くないエリアを歩き回っただけで終わることでしょう。でも、それで
構わない。ふたりは東京に抱かれるためにアジアの果てまで来たわけ
ではないのですから……。

そんな内容の脳内ストーリーを紡ぎつつしばし無目的に地下街を歩いていた
ワタクシが空腹を思い出したときには、なんだかもうカレーじゃないよな、
という気分になっていたので、敢えて味気なさを追求すべくビッカメに行き
ザバスのグリコーゲンリキッドとマルチVタブを買って会社に向かいました。

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